食べ物以外のものを食べることを異食といいます。おばあちゃんが異食しているところを最初に見つけると、見つけた方の家族が大きなショックを受けてしまいます。それでつい大きい声を出してしまいます。「どうしてそんなもの食べたの!」「汚いでしょう!」「死んじゃうわよ!」など、強い言葉で責めたり叱ったりするのはNGです。大きな声に驚いて、口にあるものを飲み込んだり、のどに詰まらせてしまうことがあるからです。
異食の原因と対策
「異食」は、認知症が進むと目立つ行動の一つです。原因は「判断力の低下」と「記憶障害」です。これを食べると危険だとか、これは食べ物ではないなどの判断がつかなくなってきています。「異食」は、花やティッシュペーパー、石鹸、ゴミなど、身の回りにあるものすべてが対象になります。私が経験したなかでは、入歯洗浄剤やボタンを食べていました。こんなものまでと驚くものまで異食します。洗剤や薬品など、体に害があるものまで異食してしまうことを覚えておいてください。
何もすることなく、手持ち無沙汰でつい、口のなかに何かを入れてしまう場合もあります。そういう時は「ねぇねぇ、隣の○○さんだけど・・・」と話しかけてみてください。「夕食の買い物、いっしょに行く?」と言って、外出を促すのもいいと思います。食べることから関心をそらすようにしてみてください。
洗剤や薬品などの危険な物は目のつかないところに移動しておきましょう。また、「触るな!危険!」という貼り紙を貼っておくのも効果的です。「異食」を防ぐには近くに何も置かないこと、本人が食べないようにいつも見守りするようにしてください。
異食症の対処法と声掛け
もし口の中に異物があるのでしたら、まず、それを取り除くことが先決です。吐き出してもらわないといけません。そういう場合は無理強いはしないで、ゆっくりと「歯磨きをしましょう」「入歯をはずしましょう」などと声掛けして、口を開いてもらいましょう。
いったん、口に入れたものを無理に出させようとすると、逆に口をしっかりつぐんでしまったり、抵抗して飲み込んでしまう場合もあります。代わりの食べ物を渡すなど「こっちの方がおいしいから、口の中のものはペッと出して」と自分から出すように促します。体に害がないようなものとわかっている場合は、無理に取り上げずに、お菓子など渡しながら、さりげなく交換するようにしています。
異食物の取り除く方法
でも、体に毒がある場合はそうは言ってられません。こういう場合は無理やりにでも、口に指を突っ込んで掻きだします。時には噛みつかれる場合もありますので、ハンカチなどの清潔な布を手に巻いて行ったください。ただし、逆に押し込んでしまう恐れがある時は無理して取ろうとしないでください。掃除機で取ろうとするのは完全にNGです。
次に試みるのが「背部叩打法」といって、腰を折り前かがみにし、顔を低くした状態にして、自分の手のつけ根の堅い部分で、相手の肩甲骨の中間当たりを何度も力強く叩きます。私の経験では、たいていここで異物を吐き出してくれます。
異物の場合、なかにはビニール袋のような溶けないものもあります。ゲームの駒とか固い物を飲み込んでしまう場合もあります。もし、異物が食道でなく気道に入ってしまうと大変です。「気道閉塞」という状態になり、息ができなくなりなります。気道閉塞は死に至る場合もあります。
突然苦しがったり、皮膚が赤紫色に変色(チアノーゼ)するなど、気道閉塞が強く疑われる場合は直ちに119番通報してください。そして応援者を呼んでください。救急車が来る間、呼びかけに反応がある場合は異物の除去を試みます。
異物の除去は「背部叩打法」もいいですが、日本医師会では「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」を優先するよう奨励されています。一方で効果がない場合、もう一方を試みます。異物が取れるか意識がなくなるまで続けます。この「腹部突き上げ法」は妊婦や乳児には行えません。自信がなければ「背部叩打法」だけで十分です。
「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」は、相手の背後からウェスト付近に手を回し、一方の手で「へそ」の位置を確認して、もう一方の手で握りこぶしを作り、親指側を患者の「へそ」の上方で、みぞおちより十分下方に当て、「へそ」を確認した手で握りこぶしを握り、すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げます。ただし「腹部突き上げ法」を実施した場合は、腹部の内臓を傷めている可能性がありますので、すみやかに医師の診察を受けるようにしてください。
当事者が呼びかけに反応しない、ぐったりして反応がなくなった場合は、心停止に対する心肺蘇生の手順を開始します。近くに応援者がいない場合は自分で119番通報を行い、AEDが近くにあることがわかっていれば、AEDを自分で取りに行ってから心肺蘇生を開始します。心肺蘇生を行っている途中で異物が見えた場合は、それを取り除いてください。異物を探すために胸骨圧迫を中断しないでください。

