グループホームでは、さっき食べたばかりなのに、頻繁に「ご飯はまだ?」と聞いてきます。なかには泣き出す利用者様もいます。利用者様にとっては「この施設ではご飯もろくに食べさせてくれないのか、ひどい施設だなあ。」と思ってしまいます。
利用者様とは施設を利用されるお客様のことですが、利用者様本位とは利用者様ファーストのことで、ひとりひとりの要介護者に最適な自立支援の介護サービスを提供することです。要介護者とは介護を必要とする人です。介護者は介護をする人です。要介護者が介護サービスを受けるようになると利用者と呼ばれます。
もし、自分の配偶者から、両親から、義父母から、要介護者から、さっき一生懸命作って食べさせたのに、何度も「ご飯まだ?」って来られたのどういう対応を取られますか?それでなくても何時間もかけて作った料理をわずか5分ぐらいで早食いされて、「ごちそうさま」の一言もなく、とっとと部屋に戻られて、すぐさま食堂にやって来られて「ご飯まだ?」と言われたら、どういう気分になりますか?
「ご飯はまだ?」の対応と対策
これが毎日続き、何度も何度も言われたら、どうですか?気がおかしくなりませんか。いつも食事の後でこんなことになり、どうせ食べたことを覚えていないのだからと、ついぞんざいな対応をしていませんか。「さっき食べたばかりでしょう。」「食事の時間ではないですよ。」「食べ過ぎはいけません。」などと強い言葉で叱りつけるのはNGです。
ご本人の「ご飯を食べていない」「ご飯を食べたい」という気持ちを最大限に尊重し対応することが大切です。こんな時には「いま用意しますよ。」「今、ちょうど用意しているところですよ。」「わかりました。もうすぐですよ。」など、本人の訴えを否定しないで、その場をおさめることが大事です。
グループホームでは、それでも納得せずに、その場から離れない場合は、ご利用者様のお怒りを鎮めてから、「お茶でも飲みましょうか。」と言って、お茶やお湯などの水分補給をします。高齢者に水分補給させるのは、介護者の重要な仕事の一つです。脱水によって病気になることもしばしばです。
それでも引き下がらない利用者様に対しては「お菓子でも食べますか。」と言って、その利用者様の好きなお菓子を渡すこともあります。低カロリーのおやつを出すのもいいと思います。でも、いつもお菓子ばかり食べさせても、肥満のもとになりますので、そこはさじ加減の必要なところだと思います。
それでも、しつこく食い下がる利用者様に対しては、「ないしょだけど・・・」「あなただけ特別に・・・」と小さいおにぎりを渡してしまうこともあります。そういう場合は信頼関係を作るようにしています。介護の現場では、介護者と要介護者の信頼関係がすごく大切です。
「ご飯はまだ?」の原因
さっきご飯を食べたばかりで、すぐ食事の催促をする行為は、食べたことを忘れてしまう「記憶障害」が原因です。ついさっきの記憶(短期記憶)が保てなくなっています。また、「見当識障害」かもしれません。見当識障害というのは、時間、日時、場所などが曖昧になる障害です。朝食、昼食、夕食といった決まった時間の食事がわからなくなっています。また、脳の満腹中枢(まんぷくちゅうすう)という食欲中枢が障害を受けていて、満腹感を得にくくなっていることも考えられます。
本人の気持ちに寄り添えば、食べたことを覚えていないので、「私は絶対食べていない!」「どうして食べさせてくれないの!」と訴えるしかありません。「忙しそうにして私の食事のこと忘れているのではないの!」「ほかの人は食べているのに、私だけに意地悪して食べさせてくれないのね!」などと、自分だけ忘れられているのではないかという寂しい気持ちになっているのかもしれません。「本当に食べていないから言っているのに、どうしてわかってくれないの!」など、自分の思いが伝わらない苛立ちを感じているのかもしれません。
介護では、そういう要介護者の気持ちに向き合い、ご本人に納得していただくことが大切です。本人が「食べていない」と訴えているのですから、その言葉を否定しないようにしましょう。「わかりました。」と理解をしてあげることが大切です。時間がおけば、その時の自分の訴えや空腹を忘れてしまうこともあります。「さっき食べたでしょう。」と言って、すでに食べた事を思い出させるような声掛けは、「食べていない」という気持ちを増長させるので、かえって逆効果です。
施設では次の仕事があるので、食事が終わるとすぐに片づけてしまいますが、それぞれの家庭では、食後すぐに片づけしないで、食卓でゆっくりお話をして、食事が終わったことをしっかり印象づけることもいいと思います。本人がまだ食べているのに、どんどん片づけはじめたり、家族が自分の食事が終わったからと席を立ち上がったりすると、食事をしていたことを理解できずに混乱してしまいます。

