血管性認知症の原因と脳卒中
血管性認知症の方の95%以上の人が65歳の高齢者と報告されています。60代から男性に多い病気です。血管性認知症は脳卒中によるものです。脳卒中の発作をきっかけに突然発症します。
脳卒中とは脳の血管が詰まったり、破れたりして脳に血液が届かなくなり、脳の神経細胞が障害される病気です。その原因によって4つの病気に分類されています。脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、同じ血管でも動脈が部分的に大きくなった動脈瘤が破れるくも膜下(まくか)出血、脳梗塞の症状が短時間で消失する一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)です。
脳梗塞は動脈硬化や血栓によって動脈が詰まることです。動脈が詰まると脳の神経細胞に血液が流れなくなり死滅してしまいます。脳の神経細胞が死滅するとその分、脳が委縮してしまうことになります。血管が詰まる脳梗塞は大きな発作だけではありません。自覚症状のない小さな梗塞が重なって本人の知らない間に発症していたこともあります。
脳出血は高血圧が続くと細い血管がもろくなり、脳の細い血管が破れて出血し、血腫という固まった血の塊りが周囲を圧迫します。正常な脳を圧迫することで脳の機能に様々な障害が起きてきます。
くも膜下出血は脳の表面を覆っているくも膜と軟膜の間の「くも膜下腔(まくかこう)」で、脳の表面を走る主幹脳動脈内で血管の一部が瘤(こぶ)状に膨れた動脈瘤(どうみゃくりゅう)などが破裂し出血が起こり、脳を圧迫します。くも膜下出血は脳卒中の中では死亡率が高く重症な病態です。
一過性脳虚血発作は脳梗塞と同じ神経症状が24時間以内に消失する状態のことをいいます。実際は1時間以内に症状が消失することが多いです。数分間の発作で消失する場合も少なくありません。一過性脳虚血発作は脳梗塞の「前触(まえぶ)れ発作」として重要な危険信号です。適切な治療をはじめると脳梗塞を予防できる可能性があります。
脳の血管障害は動脈硬化によって起こります。実は脳の動脈硬化は10代から少しずつ起こっています。動脈硬化を加速している原因は周知のとおり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病です。生活習慣病の予防として、栄養バランスのとれた食事や適度な運動、過度な飲酒、喫煙を控えるなどがあります。
血管性認知症の特徴的な症状と進行
アルツハイマー型認知症はゆるやかな下降線をたどって進行していきますが、血管性認知症の場合、突然の発作から始まり、発作を繰り返す度に階段状に症状が進行していきます。もし、再発を予防することができれば、機能を一定に保つことができます。
認知症は治すことのできない病気です。死滅した脳の神経細胞は元の戻すことはできません。しかし人間の体には隣接した細胞が代わりに機能を果たす「機能の可塑性」があります。人間には自然治癒力があります。私の場合は心筋梗塞でしたが、2本の冠動脈がふさがり、1本しかない冠動脈の状態で、いくつものバイパスの細い動脈を伸ばしてくれていました。
血管性認知症の初期ですが、発作を機に最初に現れる典型的な症状は「歩行障害」です。歩行が小刻みになります。初期の段階では「記憶障害」は比較的軽い場合が多いです。でも、本人が脳の機能の低下を自覚しているので、その不安やストレスから「抑うつ症状」になり、意欲の低下が目立つようになります。
次の発作では「発語の障害」により言葉が出づらくなります。「嚥下障害」により、食べ物が飲み込みづらくなってきます。その次の発作では「記憶障害」が起こり、覚えるのに時間がかかったり、思い出すのに時間がかかったりしてきます。さらに「実行機能障害」により、物事の段取りがうまくできなくなってきます。「判断力の低下」「集中力の低下」など、間違いが多くなり疲れやすくなってきます。
さらに「感情失禁」が起こり、激しい感情の起伏をコントロールできなくなります。突然笑ったり、怒ったり、泣いたりします。また、手足のしびれなどの身体症状、発作の起こった場所によって片麻痺になることもあります。
血管性認知症の特徴として、障害を受けた脳の機能と受けていない脳の機能が混在します。そのため症状にムラがあり、「まだら認知症」と呼ばれています。また、意識がはっきりしている時と、反応が鈍い時の意識の差があるのも特徴的です。

