認知症の原因となる病気で、最も多いのがアルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症の症状として、つい最近の出来事が、出来事そのものを忘れてしまいます。朝食を食べたことそのこと全てを忘れてしまいます。自分の体験などの出来事そのものを全て忘れてしまう「エピソード記憶」の障害、また忘れてしまったことを指摘されると、ごまかして作話(さくわ)してしまう「取り繕い反応」があるのが特徴的です。進行は発症してからおよそ10年とゆっくりしていて、75歳以上の女性に多く見られます。
アルツハイマー型認知症の原因
脳のなかに認知機能を司る神経細胞があります。この神経細胞がたんぱく質を産出したり除去したりの新陳代謝を繰り返しています。通常は一定の濃度を保っています。ところが、アルツハイマー病になると、たんぱく質が除去されなくなり、黒い塊になって溜めっていってしまいます。この黒い塊が周囲の神経細胞を圧迫したり、傷つけたりして脳を委縮させてしまいます。
黒い塊のことを「老人斑(ろうじんはん)」と呼ばれています。アミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が過剰に産出されて蓄積されて変性(病変)されたものです。老人斑は10年単位の長い時間をかけて増えていきます。アルツハイマー型認知症が10年かけてゆっくりと進行していくのはこのためです。
その後、タウタンパクという神経細胞内でも重要な物質が、異常にリン酸化して蓄積されていきます。これが「神経原線維変化(しんけいげんせんいへんか)」という病変を起こし、糸くずのような塊を作ります。これが脳細胞を死滅させ、脳を委縮させます。
脳が委縮すると認知機能の低下により、日常生活に支障をきたしてしまいます。アルツハイマー病の最初の病変部位である「海馬(かいば)」は記憶を司っているので、海馬の委縮が大きくなると「記憶障害」を起こします。
アルツハイマー病の危険因子
アルツハイマー病のおもな危険因子は、加齢のほかに糖尿病や高血圧などの生活習慣病が挙げられます。生活習慣病による血管障害が脳梗塞や脳出血を引き起こします。また寝不足やストレスはアミロイドβやタウタンパクが溜まる要因となっています。近年では歯周病が認知機能低下に関係していることが判明されています。それから加齢に伴う視力や聴力の低下は情報不足をもたらし、脳の神経細胞そのものが弱ってくる原因となっています。
アルツハイマー病の危険因子として遺伝も考えられますが、遺伝性アルツハイマー型認知症は50歳未満で発症するケースがほとんどです。認知症全体の2%ぐらいです。高齢者(65歳以上)のアルツハイマー型認知症患者とは遺伝は無関係とされています。
アルツハイマー型認知症の特徴的な症状と進行
軽度では、これまで出来ていたことができなくなり、判断力も低下していきます。もの忘れが頻繁に起こるようになり、ついさっきのことを忘れてしまいます。約束の時間を忘れたり、約束したことも忘れてしまいます。車の運転の手順もわからなくなります。日常生活に支障をきたします。不安感でやる気をなくし、抑うつ症状が見られることもあります。また、忘れた事を作話してごまかそうとする取り繕い反応が出ます。
一番恐いのが自動車の運転です。高齢者の免許返納が強く叫ばれていますが、これは当然のことだと思います。でも、地域ではバスやタクシーなどのインフラや十分な資金援助が整っていないので、一概には強制することはできませんが、早急に解決しなければいけない問題です。
中度では、記憶障害が進んで自分のことができなくなります。直前の記憶だけでなく、昔の記憶も思い出せなくなります。話している相手も誰なのか分からなくなります。グループホームでこういう症状が出てしまうと、家族の方はすごくショックを受けて帰られます。あまり来られない家族の方は電話や手紙で報告しても理解して頂けないのが現状です。いつまでもむかしのお母さんのつもりでいらっしゃいます。
中度になると外出しても戻ってこれない「徘徊(はいかい)」が始まったり、突然興奮され暴力を振るうなどの問題行動が増えてきます。着替えや入浴など、介助がなければ日常生活が送れなくなります。鏡にうつった自分に話しかける「鏡兆候(かがみちょうこう)」が現れます。この状態でグループホーム(認知症対応型共同生活介護)に入居される方が多いです。
重度になると意思疎通できない寝たきり状態になります。記憶全般が分からなくなります。自分のことや家族もわからなくなります。身体機能や運動機能も低下して、自立した生活が困難になり寝たきり状態になります。最終的には意思疎通はできない無言、無動の状態になってしまいます。

