ケアの評価というと、私たちは上手に失敗せずにケアすることや高い技術を使ったケアを考えるかもしれません。しかし、ケアの評価は私たちが行ったケアによって認知症の人がどう変化したのかを見ていくことの方が重要です。パーソン・センタード・ケアの考え方を知った私たちが、たとえ「悪性の社会心理」に気をつけてケアをしても、ケアする認知症の人の表情が険しかったり、怒りや不安、恐怖を感じさせたりしていたら、トム・キットウッドはそれは良いケアとして評価できないとしています。そして、認知症の人の心理的ニーズにあったケアが行われていたら認知症の人に変化が表れてくると言います。
トム・キットウッドが主張する認知症の人の心理的ニーズの中心が「無償の愛」というすごく観念的なものなので、なんとも評価しづらいと私は思いますが、たとえ認知症のような進行していく病気であっても、介護者のかかわりによって、認知症の人は良い状態にも悪い状態になるわけです。認知症ケアを評価し、組織的に改善する方法として考えられたのが、認知症ケアマッピング(DCM:Dementia Care Mapping)です。
認知症ケアマッピングとは、認知症の人が暮らしている施設のなかで、その人がどの程度よい状態かよくない状態か、また、どのような行動をしているのかなど、認知症の人に焦点をあてて観察する評価方法です。でも、人によって評価は違ってくるので、複数の人間の評価が必要になってくると思います。
1.よい状態のサイン
・表現できること
・ゆったりしていること
・周囲の人に対する思いやり
・ユーモア
・創造的な自己表現
・喜びの表現
・人に何かをしてあげようとすること
・自分から社会と接触すること
・愛情を示すこと
・自尊心(汚れや乱れを気にすること)
・あらゆる種類の感情を表現すること
2.よくない状態のサイン
・がっかりしている時に放っておかれる状態
・強度の怒り
・不安
・恐怖
・退屈
・悲しい時に放っておかれる状態
・身体的な不快感
・引きこもり
・力のある人に抵抗することが困難
・無関心・無感動
・体の緊張・こわばり
・動揺・興奮
・文化的疎外
ただし、よい状態やよくない状態のサインは認知症の人の示す表面的な状態を見るのではなく、本人がどう感じているかという視点が必要です。

