パーソン・センタード・ケアのアプローチと5つの問いかけ

ケア

認知症の人のBPSD(行動・心理症状)がなぜ起こるのかを考えたときに、BPSDを問題行動として捉えるのではなく、様々な問題を自分の中に抱えているために、それを訴えるべく行動を起こしていると考えるべきだとトム・キットウッドは主張します。認知症の人が起こす様々な行動は、私たち介護者に対するメッセージだと考えることは、認知症ケアにとって大きな進歩だと思います。

トム・キットウッドは認知症の人が起こす様々な行動の解決策を考えるのに、「5つの問いかけ」が重要だと述べています。

5つの問いかけ

1.それは本当に問題なのか

2.どうしてそれが問題なのか

3.誰にとって問題なのか

4.行動によって何を伝えようとしているのか

5.QOLを高める方法で解決できないか

認知症の人の問題行動(暴言、暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、もの取られ妄想、弄便、失禁など)が本当に問題なのか自分に問いかけてみることが必要です。どうしてそれが問題なのかという視点でもう一度考えてみることが大切です。これまでの認知症ケアは、その「問題」は認知症の人の方にあると考えてきましたが、実はそれらの行動は、介護者のケアを困難にさせるという理由で問題となっていたことに気づくはずです。

問題は認知症の人にあるのではなく、それを問題と考える介護者側にあると考えることで、認知症ケアに取り組む姿勢や考え方が変わります。認知症の人が起こす問題行動は、私たちのケアが認知症の人のニーズに合っていないために起こす行動であると考え、その行動によって認知症の人が介護者に何を伝えたいかを考えることによって、別の角度から認知症ケアを行うことができるはずです。

過去の認知症ケアは問題行動と呼ばれるものをいかになくしていくか、いかに抑えていくかということを中心にケアをしてきました。しかし、認知症の人の起こす問題行動が、話すことができない、自分の想いを伝えることができない認知症の人にとって、私たちのケアに対する反感やクレーム、メッセージであったとしたら、これまでの認知症ケアそのものがおかしかったことになります。

トム・キットウッドは、これからの新しい認知症ケアの考え方として、認知症の人のQOLを高めることで解決できないかと考えています。QOLは、quality of life の略です。つまり「生活の質」のことです。その人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送っているのか、人生に幸福を感じているのかということを尺度としてとらえる概念です。QOLの幸福は、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られています。

QOLは「命の質」としても訳されていて、技術を追求しがちな日本人には馴染みのない概念だと私は思っています。トム・キットウッドのイギリスでは神様を信じていて、魂の存在というものをすごく大切なこととして考えています。魂の存在を信じていない人が多い日本人の方が地球レベルで見れば、ごく少数派と考えてもいいと思います。ところが神様を信じている諸外国に比べて、神様を信じていない日本人の道徳観が世界でもトップレベルであることは私は誇らしく思っています。それは日本人には隣人を大切にしたい、弱者を守ってあげたいという「無償の愛」の素質を持っているからではないかと私は思っています。

確かに自分はかわいいですし大切です。でも、日本は地震、津波、台風、大雨などの大きな災害がある度に、お互いに助け合い協力しあっています。なかには人のものを略奪する悪い人たちもいますが、外国人の目から見れば信じられないぐらいの素晴らしい国民性に映っています。なかには、日本こそが天国(理想郷)だと言ってくださる方もいます。そんな日本だからこそ、この「無償の愛」精神であるパーソン・センタード・ケアが日本の認知症ケアとして役に立つことができるのではないかと私は思っています。

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