認知症高齢者のトイレ以外の場所で用を足す原因と対処法

対応

それまで尊敬していたご両親がトイレでない場所で用を足すのを見てしまうと、家族はさぞ驚かれることでしょう。つい大声で「なんてことするの!」「こんなところでするなんて!」叫んでしまうでしょう。本人がそこをトイレと認識して用を足した場合は、たとえ、どんなに驚愕したとしても、本人のプライドを傷つける言い方はやめるようにしてください。

本人の気持ちに寄り添って「トイレはこちらですよ」「トイレの場所がわかりにくかったですね」「トイレに一緒に行きましょう」などとやさしくトイレに誘導しましょう。汚してしまったところは、さりげなくすぐに片づけてしまいましょう。

トイレ以外の場所で用を足す原因

トイレとは違う場所で用を足してしまうのは、目的地がわからなくなる「見当識(けんとうしき)障害」が原因です。トイレと間違いやすいのは、部屋や廊下の隅、浴室、脱衣場などで、バケツやごみ箱を便器と間違えてしまいます。認知症が進むとゴミ箱に用を足してしまわれる方もいます。個室に設置している洗面器で用を足される方もいます。しかし、全員が全員そうなるわけではありません。見当識障害は中核症状ですが、トイレ以外の場所で用を足すというのは周辺症状(BPSD)です。

認知症でなくても、若い人で泥酔し眠り込み、夜中に起き上がってトイレに行こうとして、とんでもないところで用を足してしまうこともありますが、これも一時的な見当識障害です。脳が一時的にアルコールによって障害を受けた可能性があります。アルツハイマー型認知症の方は記憶が障害されているので、混乱や不安はいっそう大きいでしょう。

見当識障害は家の外に出たとたんに、周りの建物や風景が見慣れたものだと認識できなくなります。道に迷ったりします。また、自分のいる場所や目的地にある建物はわかるのに、目的地との位置関係がわからなくなり、どちらに行けばいいかわからなくなって、立ち往生することもあります。家の中でも同じような症状が起こります。

認知症が進むと「記憶障害」が進み、記憶が現在から過去へさかのぼって失われていきます。自宅をむかし住んでいた家と思い込んでしまいます。廊下の隅にトイレがあったはずだと、そこをトイレと認識してしまって用を足してしまう場合もあります。

また、トイレに行っても「こんなトイレ(洋式)見たことない、トイレがない!」と慌てることもあります。今の高齢者のほとんどの人が和式トイレを使っていたので、和式トイレをイメージして、そのまま床に用を足してしまうこともあります。

トイレ以外の場所で用を足す対処法

トイレの場所をわかりやすくするために、グループホームでは、トイレのドアに大きく「ここがトイレです」と貼り紙を貼っています。トイレが遠い場合は、トイレまでの道順を示す、矢印(トイレ→)を書いた貼り紙を廊下に貼っています。また「トイレ」という言葉よりも、トイレのマークである人型の絵文字を書くと理解される利用者様もいます。

また、夜にはトイレ近くの廊下やトイレ内の照明を常時つけておきます。本人が完全にその場所をトイレと認識してしまったら、そこにポータブルトイレを置いておきます。ポータブルトイレにされない場合はわざとバケツを置いておくこともあります。

排泄はプライベートな行為であり、個人のプライバシーを守るべき、デリカシーの必要なものです。それは認知症の方でも変わりありません。介護士として一番、気を遣うところでもあります。高齢者の方にとって、トイレに行くことを強要されたり、トイレの失敗を非難されたりすることは、本人のプライドを傷つけてしまいます。

本人がご自身で行けるのなら、朝起きた時や食事の前後に、時間を決めて「トイレに行っておく?」などと誘導の声掛けをするのもいいと思います。グループホームでは、介護日報にトイレに行った時間が記録されていますので、そこから、その方の排泄パターンをつかんで、予想してトイレ誘導します。

なかには「トイレ」と言うと、怒りだす方もいます。「トイレ」の意味を忘れてしまっている人もいます。「ちょっとつきあってくれませんか」と声掛けして誘導する場合もあります。また、本人の尿意があってもトイレに行きたいことをうまく伝えられない人もいます。そわそわしたり、落ち着かなくなったり、それぞれのしぐさや動作があります。それを見逃さないようにして、適切にトイレ誘導できればいいと思います。

グループホームではほとんどの人がトイレでの排泄の介助が必要ですトイレ介助で注意しなければならないことは、本人のプライドを尊重することです。ある程度、自分でできる場合は、ドアを閉めてその前で待ちます。失敗した場合でも、騒がないで、すばやく片付けてしまいます。また、残存能力が使えるように、できることはしていただくようにしています。便座に座れるが自分で拭くことができない人は拭くことだけお手伝いします。

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