認知症の周辺症状(BPSD)のなかの心理症状とは
心理症状は、中核症状(記憶障害、見当識(けんんとうしき)障害、実行機能障害など)がストレスや環境の変化を受けて引き起こす心の病です。
私は最初、介護の勉強を始めた時、この中核症状と周辺症状の心理症状と行動症状の関係性がよく理解できませんでした。周辺症状が「BPSD(Behavioral and PsychologicalSymptoms of Dementia)=認知症の行動的および心理的症状」に移行したことで余計に混乱してしまいました。
認知症の中核症状と周辺症状というのは認知症の一次的なものと二次的なものに区別したものに過ぎません。認知症は「認知機能が何らかの原因で低下して、日常生活に支障をきたすようになった状態(症状)」のことで、認知機能が低下する原因は「脳の萎縮」です。
中核症状は脳が委縮されたことによって生じる症状で、脳が委縮すればだれでもその症状が現れます。周辺症状は中核症状がストレスや環境の変化を受けて引き起こす二次的なものです。だから認知症患者の誰もが該当するわけではありません。暴力を振るう人もいれば振るわない人も出てきます。
周辺症状(BPSD)は認知症患者の症状を見て、後付けで作られた感じがします。BPSDと呼ばれるようになって、心理症状と行動症状が区別されましたが、認知症患者の方によって、様々なパターンがあるので、一概に分けることはできません。中核症状から心理症状の「不安、焦燥」になって、「暴力」や「徘徊」の行動症状が現れたりします。中核症状から心理症状の「抑うつ症状」になって、行動症状の「無為、無反応」になることもあります。
それは周辺症状が周り環境や生い立ち、その人の性格、障害の場所や大きさによって変わってくるからです。逆にいえば、よく認知症というものを体系化できたものだと思います。その方が介護者が介護しやすいからです。何の知識もなく介護すると介護者自身がパニックに陥ってしまいます。介護者が介護の勉強をすることはとても重要なことだと思います。
おもな心理症状の意味と原因
認知症が進行するともの忘れが多くなります。理解力も低下していきます。しかし、最初からすべてのことが分からなくなっているのではなく、少しずつ衰えていくものです。ご本人自ら、自分の機能低下を自覚しながら現実とのギャップを感じています。こういうギャップを埋め合わせようとして周辺症状が起こっている場合が多いです。
おもな心理症状として、自信をなくして気分が落ちこむ抑うつ症状、心身の機能低下の危険がある自発性の低下(アパシー)、暴力、徘徊などの行動症状につながる不安、焦燥、事故につながる危険がある幻覚、記憶障害が起こる妄想があります。
特に多いのが妄想のなかの「物盗られ妄想」です。多くの場合は、ご自身で失くしたり盗まれたりしないように、財布などを見つかりにくい場所に隠すのですが、財布を隠した場所を忘れ、さらに隠したことさえ忘れてしまいます。その後、財布がいつもの場所にないと「誰かに盗まれた」という妄想が生まれ、大騒ぎをして、身近にいる家族を疑うようになります。
介護する家族にとっては自分たちが疑われるわけですから、とてもつらくて、ストレスのもとになるものです。物盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症の初期から中期に見られるものです。認知症によって起こる妄想の約6割を占めています。物盗られ妄想はご本人の不安感や依頼心などさまざまな要素が関係していますが、グループホームでは日常茶飯事です。
抑うつ症状
自分で何をやってもうまくいかない、これまでできていたことができないなど、ご自身が認知症を自覚することで、気分が落ち込み、何もする気になれない状態のことを抑うつ症状といいます。感情や喜びを表すことが極端に少なくなります。表情も乏しくなり、慢性的頭痛、不眠などの身体的症状を訴えることもあります。
自発性の低下(アパシー)
抑うつ症状と似ていますが、気力がなくなり、自分から何かをする意欲を失ってしまうことを自発性の低下(アパシー)といいます。認知機能の低下を自覚し、家に閉じこもりがちで、何もせず、何もしたがらないまま、周囲も働きかけをしないと、さまざまな心身の機能低下に陥る「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」なる可能性があります。
不安、焦燥
認知機能の低下を自覚し、的確な状況判断ができなくなって不安がつのり、また、気の焦りでイライラしやすくなります。ストレスからくる強い不安感から、暴力、徘徊などの行動症状に繋がったり、大きな声をあげたり、人を無視したりします。
幻覚
実際にはないものが見える幻視や実際にいない人の声が聴こえたりする幻聴があります。レビー小体型認知症では幻視がよく見られます。幻覚があると事故につながる危険があります。医師による適切な対応が必要です。
妄想
誰かに大事なものを盗まれたという物盗られ妄想は記憶障害から起こります。誰かが自分の悪口を言っている、食事に毒が盛られるなどの被害妄想、迫害妄想、配偶者が浮気していると思い込む嫉妬妄想、家族から見捨てられるのではないかという見捨てられ妄想があります。

